ファスティング(断食)によって代謝は上がるのか、下がるのか? 結論と理由

断食(ファスティング)の基礎知識
この記事は約11分で読めます。

代謝の学習前編では「代謝とは何か」について学んできました。

「代謝とは何ですか?」と聞かれて分からないという方はぜひ、前編のページもご覧くださいね。

代謝とは?代謝についての基礎知識
ダイエット業界であふれる「代謝という言葉の数々。「代謝が上がる」、「運動しないと代謝が上がらないよ」と様々に使われますが、「代謝」という言葉についてあなたは理解できていますか? 今回は代謝の学習前編の基礎知識として代謝とは何かについて解説します。

今回は代謝の学習後編として、「ファスティング(断食)で代謝は上がるのか、下がるのか」について述べていきたいと思います。

ファスティング(断食)と代謝の関係性~通説~

結論から言うのであれば、ファスティング(断食)中に関してはファスティング(断食)期間に応じて代謝は下がり、ファスティング(断食)期間終了後、普段の生活に戻した際には代謝が上がるというのが通説です。

ちなみに、先に注釈をいれておきますと、ファスティング(断食)後に代謝が上がるというよりは、排水口のつまりがとれて滞りなく水が流れるように、ファスティング(断食)によって代謝を阻害していた要因が解消され、通常あるべき代謝の状態に戻るという理解です。

ファスティング(断食)を月に1回、1年間続けたからと、「代謝が上がり続けて1日の消費カロリーが2,500kcal超えてきます!」という話ではないです。

今、これは、エネルギー代謝の話をしましたが、これは物質代謝の話でもあります。

それでは、それぞれ詳しく見ていきましょう。

ファスティング(断食)中

例外は多々ありますが、統計的なデータをとると、ほぼ一貫してファスティング(断食)中は代謝が下がるというデータになっています。

ファスティング(断食)中というよりは、摂取するエネルギー量、つまりカロリーを減らすと、体がそれに合わせて、使用するエネルギーを減らします

私達もそうですよね?
月20万円くらいもらっていたお給料が急に10万円に減らされたら、当たり前に節約をします。
月に20万円入ってくる中で、18万円の生活費がかかって、2万円貯金していたのを、節約して生活費を15万円に抑え、残りの不足分を貯金を切り崩して、なんとかやり過ごします。

ファスティング(断食)中は摂取するエネルギー量が減るので、体はそれに合わせて消費するエネルギーを減らしていきます。
すなわち、体は「節約モード」のような状態となり、体温も、血圧も、血糖値も緩やかに落ちていき、代謝が下がります。

ファスティング(断食)中によく、手足に冷えを感じる方がいらっしゃるのですが、それは脳や心肺機能など生命維持に必要な部分に血液を重点的に回し、重要度の低い部分でのエネルギー消費を抑えるからです。

分かりやすく、体に当てはめてみましょう。

エネルギー量比較

月の収入(20万円)=摂取するエネルギー(食事など)、月の生活費(18万円)=1日に消費するエネルギーです。

吸収率という過程を思考から除いた場合、消費エネルギーよりも摂取エネルギーの方が多いので、基本的にはこの生活では痩せませんね。

月々20万円の収入で、普段の生活費は18万円です。

エネルギー量比較

これがもし、月収が10万になったとしても、生活費はかなり切り詰めて15万が限度です。
生命維持をしなくてはいけないので、代謝を落とすにしても限界があります。この切り詰めた生活費の中に、手先や足先の体温維持等が含まれます。ファスティング(断食)中に眠さを感じる方は体が消費するエネルギーを節約しようとしているサインです。

代謝についての前編でお話した「活動代謝」を抑えることができる状態が、寝ている状態になります。そのため、体が寝てくださいね。とサインを出しているのです。

それでも5万足りないので、貯金を切り崩しますよね。
これは、体で言うなら、この貯金はなんだと思いますか?
こういった事態のために、体に溜め込んでいるエネルギーの塊。それが、中性脂肪です。
だからファスティング(断食)は、脂肪が燃焼するのです。

ファスティング(断食)をダイエットとして取り入れることに否定派の方々で「ファスティング(断食)をすると、代謝が落ちるから太りやすくなります。」主張している人たちがいます。
代謝が落ちたとき、普段の生活で1,400kcalのエネルギーを消費している方は、ファスティング(断食)をすると700kaclで暮らすのでしょうか?
確かにファスティング(断食)をすると代謝が落ちますが、代謝が落ちて、普段の消費エネルギーの半分のエネルギーで暮らせるのかと言ったら、そういう訳ではありません。
仮死状態ですか?ということになってしまいます。

私たちの生活でもそうです。もしも、収入が20万円から10万円に減った時、その瞬間に、家を解約して野宿をし、子供の塾を辞めさせ、携帯を解約し、毎日食パンの耳しか食べない…と言った生活にいきなり変更しますか?
さすがに一気にここまではやらないですよね。

今までの貯金を切り崩しながら、少しづつ節約をして、次の仕事を探したり、バイトを増やしたり、一定の水準に戻ることを前提として、バランスをとりながら生活します。
そして、収入が20万円に戻ったら、無理していたギリギリの節約生活を解消させます。
ファスティング(断食)も同様
です。

理解できましたでしょうか?

ファスティング(断食)中は期間に応じてゆるやかに代謝が落ちていき、普段の生活に戻したら代謝は戻ります
これが、ファスティング(断食)期間中における代謝が上がるのか、下がるのかという話です。

ただし、断食道場をやっていると多数の例外があることもわかっています。
ファスティング(断食)中に脈が早くなり常に90を越えている方や、体が熱くて熱くて汗が止まらないという方など、統計的な結果とは別に例外も多数確認していますので、もしこのセオリー通りに体が反応しなかったとしても不安にならないでください

本当に好転反応でしょうか?

ちなみに、冷えも、頭痛も、体の怠さも、ファスティング(断食)中の不調を全て「好転反応」等で片付けている、意味のわからないブログやYoutubeも多々あるので、理論をしっかりと理解しましょう。
「好転反応」は、少なくても現在何かしらが好ましくない状態にあり、それが良くなっていく過程で起きる反応です。頭痛も冷えも、体温の上昇も吐き気も、胃の痛みも全て「好転反応」で片付けられていたら、それは述べている人の知識の正確さを疑ったほうがよいかもしれません

ファスティング(断食)後

ファスティング(断食)後に、代謝が上がる理由ですが、正確に言えば「代謝が上がる方が多い」といことです。

なぜこのようなふわっとした解答になるかということですが、100点満点のテストで100点を取れている方は上がる余地がないですが、平均点の50点くらいしか取れていない方は50点が60点になりますという話です。

ひとつの細胞が生み出せる限界のエネルギーを100点とした場合に、多くの方がそのパワーの半分も引き出せていないため、多くの方はファスティング(断食)により細胞がクリーニングされて、代謝が上がるといことです。

錆びついたエンジンがクリーニングされて、効率的に燃料が燃える状態を想像していただけたらと思います。
キレイなエンジンをクリーニングしても、更に燃費効率が上がることはありません

ファスティング(断食)について少しでも学ばれた方は、その効果において体に60兆個あると言われる細胞のクリーニング、細胞の正常化と活性化が行われることはご理解いただいていると思います。

前編で、1日の消費エネルギーの割合のうち、基礎代謝は部位ごとの消費エネルギーの割合を解説しましたが、どの部位も全て細胞の集まりでできています。
筋肉も、脳も、肝臓や腎臓、心臓などの内臓も、全て細胞の集まりでできています。

従って、その細胞のひとつひとつが生み出せるエネルギー量が増える、言い換えるなら細胞のひとつひとつが消費するエネルギー量が増えれば、必然的に代謝が上がるということです。
物質代謝的な言い方であれば、代謝が滞りなく進むということでしょうか。

エネルギーに着目するのであれば、摂取した食事などを様々なプロセスを経て体が使用できるエネルギーへと変換していくのですが、細胞内でその働きをするのがミトコンドリアという小器官です。

現代においてそのファスティング(断食)による効果として、

  • 代謝が上がる理由1: ミトコンドリアの数が増える
  • 代謝が上がる理由2: ミトコンドリアのエネルギー産生効率が上がる

研究結果は概ねこの方向性で一致しています。

簡単にすると

ここから非常に簡単なモデルでお話します。

普段私達は食事を摂り、それを基本的な原料としてエネルギーを作り出しています。エネルギーがなければ、心臓も脳も動かせません。
ファスティング(断食)というのは、外から入ってくるエネルギーがなくなるという、体にとってはある種の緊急事態です。

こんな緊急事態でも細胞はエネルギーをどうにかして作り出さなくてはいけません。

まず、エネルギーを作り出すための工場は、ミトコンドリアを増やして対応しようとします。そして、口から入ってくるもの以外のものを利用してエネルギーを作り出そうとします。
これは体内の脂質などを使用してケトン体という物質を作りそれをエネルギーとして利用していくようなシステムです。

この細胞の焦りよう、わかりますか?
そのエネルギーがないと、私たち死ぬんですよ。
でも、その原料となるものが一気に減ってしまった。

例えば、妻も子どももいるのに、ある日突然リストラ対象になりかけたお父さんみたいな気分です。
リストラされないために必死で働いて成果を上げないと生き残れませんね。まだリストラなら転職の余地がありますが、細胞にとっては、生命が死ぬか生きるかの境目ですから必死で働きますよね。

筋肉に大きな負荷をかけて筋肉を強くするように、細胞に大きな負荷をかけて細胞を強くする。
ファスティング(断食)は、細胞の筋トレですね。

これによって、エネルギー産生効率が上がるのです。

ミトコンドリアへの副次的効果

更に、ファスティング(断食)をすると、ミトコンドリアに副次的な効果があります。

ミトコンドリアが仕事をするとき、美しく整ったオフィスで仕事をするのと、ゴミ屋敷のようなオフィスで仕事をするのであれば、どちらが作業効率がいいと思いますか?
当然美しく整ったオフィスでしょう。

ミトコンドリアにとってのオフィスは細胞です。この細胞内にゴミ、不良タンパク質がなくなり、細胞内がキレイになるのです。
この細胞が自分自身で不良タンパク質を再利用することを「オートファジー」といいます。
これを世界に発表したのは日本人の大隅良典教授という方で、2016年にノーベル賞を獲得されています。

私達の体のほとんどはタンパク質でできています。
皮膚も髪の毛も爪も血管も心臓も内臓も。
それら全てをたった20種類のアミノ酸を原料として作っています
この難しさと精密さわかりますか?目も髪の毛も、20種類の原料を組み合わせて作っているのですよ?

ただ、これだけ複雑だからこそ、不良品が発生します。
質の低い細胞は質の低い製品を作り出し、不良品も多い。
逆に、質の良い細胞は質の高い製品を作り出し、不良品も少ないのです。

多少であれば、不良品も問題ありません。不良品は一定ペースで分解されて再利用されていきます。
しかしながら、普段私達はとにかく食べて食べて食べての繰り返しなので、細胞内にこの不良品がたまり続けていきます。
特にこのオートファジーの仕組みを理解せずに、タンパク質過多の食事をしている方は、不良品だらけになってしまいます。

しかし、ファスティング(断食)をして、外からタンパク質という原料が入ってこなくなりました。

体は日々新陳代謝を行い、新しい細胞を作り、古くなった細胞を壊して捨てていく、という生命の営みも難しくなってしまいます。そこで、細胞内に溜まっていた不良タンパク質を分解して体を作るための原料に変えていくということです。

これは細胞が細胞内をキレイにしようとしてキレイにしたというよりは、副次的な効果によって細胞がキレイになったというイメージです。

コロナ禍で収入が減って、それを埋め合わせるために部屋の中の不用品をフリマアプリで売りました。
その副次的な効果として、不要なものが減って部屋の中がスッキリしたというイメージです。

まとめ

代謝を引き合いに出すダイエット理論の多くが、「鍛えられる部分は筋肉だけ」という前提に基づいています。

また、「代謝を上げる」系の多くのダイエット食品や健康食品は、不足しているものを補うことで効果があると謳っています。

例えば、コエンザイムQ10など、皆さんは漠然と良いイメージがあると思うのですが、あれは細胞がミトコンドリアというエネルギーを生成する器官でATPがエネルギーを生み出す際の、電子伝達系というプロセスで必要で、これが足りていない人が多いから元気が出ると言われています。

そのため、100点が取れている人は、それ以上点数の上げようがないように、コエンザイムQ10という補酵素を十分に持っている方にとってはメリットがほとんどありません

しかし、多くの方は自分自身に不足しているのかどうなのかわからないけれど、コエンザイムQ10は元気になる!とサプリメントを購入してしまいます。
酵素と補酵素がわからない方は、酵素とは~概論~のページをご覧ください。

酵素とは~概論~
ファスティング時以外でも、よく耳にする「酵素」とは何か。酵素が足りない!と叫ばれる理由とは。概論について、動画とともに、解説します。

ファスティング(断食)も同様です。あなたの体にある60兆個の細胞のひとつひとつが100%健康で、あなたの食生活も100点満点で、体が必要とするビタミン・ミネラル類をはじめとする各種物質が100%確保できており、反対に体が不要な重金属類や化学物質などを一切摂取していない状態の体であれば、ファスティング(断食)によって得られるメリットは多くありません。

しかし、現代社会に生きる多くの人は何かしらの不調や不具合があると思います。
ストレスを感じていたり、朝起きるのが辛かったり、よく眠れなかったり、体温が低かったり、風邪をひきやすかったり、肥満気味であったり、血圧が高かったり、疲れを感じていたり…。
こういったことをファスティング(断食)は総合的に改善できます。これがファスティング(断食)が予防医学と言われる所以です。

例えば、読解力が低いと、テスト問題が正確に理解できず、「何を問われているのかわからない」という自体が発生します。
だからまず基礎の読解力を上げてあげると、国語の成績だけでなく、全教科の得点アップに繋がるのと同様です。

断食中に関しては断食期間に応じて代謝は下がり、断食期間終了後、普段の生活に戻した際には代謝が上がるこれが現在の通説です。

この結論よりも、この結論に至る理由を理解し、応用していただけたらと思います。

コメント

  1. […] ファスティング(断食)によって代謝は上がるのか、下がるのか? 結論と理由ファスティング(断食)をダイエットとして取り入れることに否定派の方々で「ファスティング(断食)をすると、 […]